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ライヴハウスの聖地渋谷、その最高峰であるO-EAST。
ここで文字通り「初のワンマンライヴ」をする天国民。
この大舞台に、怯まず(ひるまず)に立ち向かえるのは、最低でも週2回、年間にして150本に及ぶライヴ本数。そして、心の状態とインスピレーションが最も問われるゴスペルという音楽スタイル。この2つによって「心技両面」が磨き上げられ、圧倒的ライヴ力が培われていたからである。最高のライヴ集団、天国民が、待望の大舞台に解き放たれる瞬間が来た。
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いよいよライブスタート。
SEにのせてシルエットを浮かべながらメンバーが登場する。
ファンク調の「All of me」は、天国民定番のオープニングナンバー。
そこから、鮮やかに2曲目AORナンバー「山にむかい」に滑り込む。
ここで、完全に、いつもの通りの天国民ライヴが動き始めた。
そして、こちらも定番のオーディエンスを巻き込んで「ハレルヤコーラス」。
3声にきれいに分かれた600人の大合唱は、ステージのメンバーには「勝利の歌声」に聴こえたとか。
「もっとアウェイな感じかと思ってたけど、全然そうじゃなかった」Sax.ナオヤは、この歌声に励まされた。
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#0 intro
#1 All of me
#2 山に向かい
#3 Hallelujah |
#4 Its' So Easy |
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続いてレゲェ調の「Its' So Easy」から、アッパーチューンの「上を向いて歩こう」。
この2曲で、ステージは前半のハイライトを迎える。
特に、今回のO-EAST仕様として準備された、「上を向いて歩こう」ダンスステップ。
「せっかくの大会場なんだから、ヴィジュアル的にも何か楽しんでもらおう」と、ダンスインストラクターでもあったKumikoの振り付けで、天国民が踊ったのだ。
「あまりにも楽しくて、全然覚えていない」という、Dr.イッキのダンスは、間違いなくこの日の名場面と言える。
「ライヴ後、知り合いからメール沢山来たんだけど、ドラムよりダンスの事ばっかなんだよね」 |
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#5 上を向いて歩こう |
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ところで、このダンスシーンで演奏されたフレーズに「おや?」と反応した方は、相当の80'sフリーク。
あのポップスター、シーラ.Eの「Love Bizarre」の中のフレーズを、アレンジしたのである。
天国民と家族同様の付き合いである、シーラ.E、彼女の曲をここで再現。
そして、そのシーラを始め沢山のビックアーティストを紹介してくれた、ゴスペル界の首領(ドン)、天国民のダディ(父親)アンドレ・クラウチ。彼の曲はアンコールで使用。
さらに、アンドレの片腕でモータウン創成期からの重鎮、リンダ・マクレアリーの全世界未発表の新曲を、オープニングSEにして入場など、このライヴは、世界中の天国民ファミリーの「魂」が宿っていたのだ。
そうそう、2曲目の「山にむかい」は、スムースジャズの巨人、カーク・ウェイラムがレコーディング参加してくれている(CD未発表)。彼もKICK BACK CAFEの熱烈なファンであることは有名だ。
「シブヤにモバイルKICK BACK CAFE(携帯キックバックカフェ?)が出来るんだって、いいね!」
自分の事の様に喜んでくれたカーク。
世界的アーティストである彼らの思いが、この2010年4月19日という日を支えていた、これはすごい事なのだ!
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そんなビックイシューの追い風に乗りながら、ステージは中盤のアカペラから、マレのソロナンバーへと、「勝負の時間帯」に突入。
アカペラの際には、ボーカル4人が一列に並ぶのだが(これを「仙川タクシー」と名乗り、活動することもある)、この日はステージが広くて「マレさんの姿が見えない瞬間があった」というCho.マキ。
この時初めて、いつもとは違う大舞台を彼女は実感する。
#6 Oh How I Love Jesus
#7 Awesome God |
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しかし、暗転のステージから、たった一人で歌い始めるマレ。
時間を置いて、もう一つのスポットの中に浮かび上がる、コーラス役のKumiko。
涙の中から希望を見出そうとする、珠玉のバラード「約束のパラダイス」。この曲がどれだけ大観衆に心に届くか。
大所帯だった天国民が、ボーカル2つと鍵盤2つになって挑む、まさしく勝負の分かれ目的1曲だ。
「自分の楽器パートが目立つから責任重大、だから、『早く終わってくれ』という思いと。でも、『この曲がずっと続いて欲しい』という、2つの正反対の思いがあって不思議でした」。
KICK BACK CAFE以外のライヴハウスは、O-EASTが初めてだった、メンバー最年少(22歳)Key.りょうすけは、不思議な体験をした。
#7 約束のパラダイス |
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イベントがライヴに変った。もはや、渋谷もキックバックも関係ない。
バンドもオーディエンスも、心の深いところで音楽と向かい合うときが来た。
「生まれる前にいた場所へ」で幻想的な世界を漂い。
一連のムーヴメントのきっかけとなった新曲「大切な人よ」、現代ゴスペルの代名詞「Amazing Grace」、そしてジャパニーズ・ゴスペル天国民の真骨頂「恵みの唄」。
新旧、和洋折衷を越えた4曲で畳み掛けた天国民アテチュードに、場内は完全に一つになったのである。
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#9 生まれる前にいた場所へ
#10 大切な人よ
#11 Amazing Grace
#12 恵みの唄 |
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#13 Together |
そして、運命の1曲がやってきた。
天国民名義ではなく、マレのソロナンバー「Together」。
「黒人のように歌うことは出来ません、でもこれが僕のゴスペルです」というMCで、20年間彼が歌い続けてきた曲。
主人公の歌手は、場末の酒場で歌いながら「ここだけが人生じゃない」と、未来への希望を恋人に語る、そんな力強いメッセージナンバー。
KICK BACK CAFEの常連ミュージシャンで、70年代にデビューした小出正則さん(代表曲は「朝日が丘の大統領」主題歌など)は、客席でこの曲を聴いて心が震えたという。
「いやあ、いいもの聴かせてもらったよ」。
いわゆるフォーク世代の彼は、嬉しそうに、何度も感動を口にしてくれた。 |
「明らかに会場の雰囲気が変った」Dr.イッキ。
「何か、大きな波動(はどう)が、客席に発射された、って感じ」Vo.マレ
決定打となった最後の曲は「The Lord's Prayer」
世界的なゴスペル・ヒットマーカー、トミー・ウォーカーの代表曲を、天国民がカヴァーし、新作CDに収録したものだ。
ちなみに、このオリジナル作者であるトミーは、前月の3月に来日。
シークレットながら、天国民のGOSPEL FESTに特別参加してくれた。
勿論、カヴァー当初は、原作者と同じステージに立つなどと、誰も想像してはいなかった。
目に見えない何かによって、ストーリーは綴られている。
Vo.Kumikoの、まるで宇宙からの流れてきたかのような、神秘的なメロディーラインから始まり。
ドラマチックに展開されていくこのナンバーは、フィナーレを飾るに相応しく。
しかも、全米デビューの準備を始めた、天国民のこれからを示すかのような、記念すべき演奏となった。
#14 The Loed's Prayer |
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encore : All Becayse of Jesus |
アンコールは、前述したアンドレ・クラウチのナンバー「All Because of Jesus」。
解放感からか、ステージを無邪気に走り回るメンバー。
「なんか体が軽く感じましたね、羽が生えたって感じ」
オペラ歌手として、普段は新国立劇場の舞台に立つCho.龍進一郎は、天国民のメンバーでなければ、
ステージ上でジャンプすることは生涯無いはずだ。 |
音楽は、空気を変える。
そして、人の人生をも変える。
それはプレイヤー(演奏者)もリスナーにとっても同じで、ライヴはその「世界を変える」共同作業の場だ。
当日会場に足を運んでくれたあなたに、この場を借りて、天国民バンド、スタッフ、
そしてO-EAST&KICK BACK CAFEスタッフ一堂からよろしく。
なぜなら、あの日、4月19日。
日本ではまだ無名の音楽集団が、渋谷O-EASTを満員に埋めた時。
あなたがいてくれたから、音楽の世界は確実に変ったのだから。
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