2014.12.18 AKASAKA BLITZ

HEAVENESEのプロデューサーで1月に急逝したアンドレ・クラウチのトリビュート・コンサート、
The Bridge 明日への架け橋 Chapter 1

大盛況のうちに幕をおろしました。
朝から強い雨という予報でしたが、大雨にもならず、天候も守られました。
アンドレが天国から見守ってくれていたのでしょうか・・・。

ほぼ定刻どおりにロビーが開場し、お客様には、HEAVENESEコンサート定番のモバイル・キックバックカフェでくつろいで頂きました。
そしていよいよ午後5時。いつもよりも早い開演時刻。
日曜日ならではのスケジュールです。

開演直前、グラミー賞受賞サクソフォンプレイヤー、カーク・ウェイラムから届いたビデオメッセージが上映されました。

HEAVENESEのアメリカデビュー版EPのAll of meで彼のサックスがフィーチャリグされています。

予定時刻10分過ぎ。
古の謎を解き明かすためにやってきたHEAVENESEという、定番のストーリー映像が流れいよいよ開演です。

1. Precious Lord Take my hands

ミステリアスなオープニング映像とは打って変わって、会場に響くチャーチオルガン。
ステージ上方から客席に向けて光線が照らすと、光の先にはクミコが。
オルガンが鳴り止み、鈴の音だけがひびく中、Thomas A. Dorsey と George Nelson Allenによるゴスペルの名曲をアカペラで歌いながら、ステージにゆっくり歩いていきます。

この曲は、公民権運動の指導者キング牧師が心の支えにしていた曲です。
彼は、当時人気絶頂だったゴスペルの女王マへリア・ジャクソンを集会に呼び、ちょくちょくこの曲を歌ってもらっていたといいます。
ちょうど、同じ頃、アンドレ・クラウチはディサイプルを従えツアーを開始しました。

ゴスペルと公民権運動は、きってもきれないものです。
人種差別と戦った公民権運動を支えた曲。
黒人たちに戦い続ける力を与えた歌。
それこそがゴスペルです。
ゴスペルレジェンドであるアンドレ・クラウチを追悼するコンサートのオープニングを飾るのにこれほどふさわしい曲はありません。

黒のキモノをドレス風にアレンジしたオリジナルの衣装に身を包み、頭にはライブ用に大胆にアレンジされたオリジナルのトークハット。
喪に服すアメリカの葬儀をイメージした和のアレンジ。
いつもと違う追悼の夜が幕を開けました。

2. Let the church say Amen

ステージの上でクミコを待っていたマレ&コーラスチーム。
それぞれに提灯をもち、アンドレ最後のアルバムに収録されてるグラミーノミネート曲「Let the church say Amen」のイントロが始まりました。
スクリーンにはHEAVENESEの思いがメッセージとして映し出されます。

― とめどなく、あふれる感謝は、ことばではとても表せない
― 今まであなたがしてくれたことなしには、
― 今のすべてのことはありえないから・・・

そして画面一杯に映し出されたアンドレの写真。
誰もが「特別な夜」を意識した瞬間です。
さらに、画面には、アンドレの死に際して発表されたオバマ大統領の追悼メッセージが。

偉大すぎるアンドレ。
しかしHEAVENESEは、彼の意志を受け継いだレガシー。
アンドレ・クラウチのレガシーとしての自覚を胸に、新たな歩みをスタートしたHEAVENESE。
そんな彼らの熱い思いと、アンドレへの感謝が会場一杯に溢れた追悼式。

3. All of me

追悼コンサートに相応しい厳かなイントロが終わると、舞台は一挙にいつもの激しいHEAVENESEショーヘ。
All of meのスタートです。

4. You are Good

そして、ラッセラーのお囃子から、Israel Houghtonによる名曲 You are good。
この流れは今までの国外ツアーで始まったもの。
観客を飽きさせないスピード感と、見た目にも面白い振り付けもあり、HEAVENESEがアクセル全開でトップギアに。

5. Mighty Wind

「日本の心は伊勢でしょ」
マレのこのシンプルな呼びかけは、日本人を意識させてくれます。
オーディエンスと一つになって振り付けをあわせ、ともに「お伊勢参り」。
この曲で、文字通り心はお伊勢参りしたと涙を流す人も。
伊勢というのは、そういう存在なのですよね。

マレ曰く『ステージから見えるみんなの手は川の流れのようで美しい』そうです。

6. It’s gonna rain

HEAVENESEとして、初公開のアンドレの曲。
数あるアンドレの曲の中でもマレが一番好きな曲だそうです。

旧約聖書に記されているノアの洪水物語を扱っている曲ですが、『神の裁き』という重たいテーマをアンドレは軽快なファンクで歌いました。
アンドレ・クラウチが偉大だったのは、黒人の教会で歌われていたゴスペルを、音楽的な垣根や人種の壁を超えて広く、教会外の人々に届けることに成功したことです。
それは、彼のゴスペルが音楽的に当時の常識の枠を超えた斬新なものだったからです。
重厚な旧約聖書のストーリーをファンクで歌うなど、当時は誰も考えていなかったのです。

HEAVENESEは、アンドレのサウンドに和のテイストを加え、さらに和傘の振り付けを加えることで全く新しい世界を表現しました。


トーク1

HEAVENESEのコンサートがただのショーではないのは、必ずメッセージがあること。
今回はキング・オブ・ゴスペルを追悼するコンサート。
おのずとテーマはゴスペル。
Marreのトークが、ゴスペルと呼ばれる音楽が誕生するようになった歴史から、その影響までの歴史ドラマへといざないます。
ゴスペルは、アフリカから強制的にアメリカにつれてこられたアフリカ人たちが、奴隷として虐げられていた中で歌い始めた魂の叫びニグロ・スピリチュアルズから派生したもの。
大航海時代以来の白人による世界支配と、人種差別の歴史、そしてアメリカにおける人種差別との壮絶な戦いを支えた音楽としてのゴスペルの歴史が解き明かされます。
そんな人種差別との戦いに、日本がどうかかわってきたのか、その忘れられた歴史秘話が人々を惹き付けました。

■公民権運動と日本の関係についてのマレの解説はこちらから

7. Glory

人種差別と戦った公民権運動のヒーロー、キング牧師のストーリーを描いたアメリカ映画「Selma/邦題グローリー明日への行進」のテーマ曲。(6月19日、日本公開)
John Legend とCommonによるこの曲は、第87回米アカデミー賞で主題歌賞を受賞した名曲です。
これをHEAVENESEがカバー。
HEAVENESE初のラップ。
ドラムのイッキも太鼓に回り、初のドラムレス、「太鼓三人衆」という新境地。
トークに引き続き流れる同じテーマ「人種差別との戦い」が、新しいサウンドと、映像によって立体的に浮かび上がります。

グローリーのPVからHEAVENESEに参加している琴プレイヤー岡戸朋子

8. It’s so easy

米国デビューEPに収録されているレゲエの楽曲。
レゲエはマーカス・ガーベイという黒人民族主義者が、人種差別との戦いの中で発した「ラスタ運動」を歌ったもので、ボブ・マーリーによって世界的に普及しました。
ボブ・マーリーが尊敬したガーベイですが、彼もその他の黒人指導者同様、日本に人種差別と戦う有色人種のリーダーとしての役割を期待していました。
レゲエという音楽の背後には、日本に影響をうけた黒人指導者ガーベイの存在があったのです。
そんなガーベイに敬意を表して、この日のプログラムに盛り込まれた曲。
期せずして、サックスナオヤが新ラッパーとしての存在を見せつけるという嬉しいサプライズがありました!

9. Man in the mirror

ご存知マイケルジャクソンの名曲。
アンドレ・クラウチは、この曲のゴスペルクワイアを担当し、グラミー受賞式では彼と彼のクワイアがマイケルと共演しています。
マイケルのこの名曲を和のテイストでアレンジ。
インストルメンタルで演奏しました。
画面には、アンドレとマイケルの知られざるエピソードが紹介されました。

http://www.heavenese.jp/michael.html

マイケルが最後に制作していた未発表のアルバムとマイケルの死にまつわる知られざるストーリー。
キングオブポップと、キングオブゴスペルという二人の天才が紡いだ感動秘話です。
最後には 和装にハットのHIDETOMOによる和製マイケルダンス。
マイケルをリスペクトするHIDETOMOのキレのあるパフォーマンスに会場から大きな拍手が。

ドラマチックな感動から一転、HEAVENESEのコンサートに欠かせないのは笑いです。
ここ最近はストーリー性のある寺子屋コントが続いていましたが、アメリカツアーの原点に帰ってのパーランクパフォーマンス。

10. 3N1

そして、定番の3N1。
太鼓打ちではないメンバーたちが、マイクや楽器をバチに持ち替え、全員で叩くこの曲の人気はどこにいっても圧倒的。
今回は、尺八のユウタも太鼓デビュー!
そして、前列には、太鼓笑人めでたいから、MORIMITSUが忍者で乱入!!!!
圧巻の太鼓演奏を見せてくれました。

トーク2

コンサートのテーマである人種差別との戦いという視点から語られる日本精神トーク
信長の時代に存在した二グロ・サムライの物語を通して、日本には肌の色による人種差別が存在しなかったことが語られました。
当時日本にやってきた外国人の手記によれば、日本人はオランダ人を軽蔑していたことがわかります。
人種差別をするからだそうです。
日本は戦国時代からすでに、有色人種の希望となる運命を与えられていたのかもしれません。

そんな気高い日本の心を忘れてはいけない。
だから日本人はあらゆる人種差別に反対し、違いによって人を拒絶したり、憎悪だけをうむヘイトスピーチなどにはノーを言わないといけない・・

伝統と文化の中で育まれてきた日本人の精神風土。
その尊さにきづき、それを大切にしよう・・・

そう語りかけるマレの言葉に、聴衆は静かにききいっていました。


12. 生まれる前にいた場所へ

そして、メッセージのしめくくりとして歌われた「生まれる前にいた場所へ」
毎週水曜日に行われているHEAVENESE BRIDGEのテーマ曲であり、故・今井雅之さん主演の舞台「手をつないでかえろうよ」 のイメージソングとしても使われた曲。
HEAVENESEの「心」を代弁する代表曲。

13. Together

マレの心情をストレートに歌ったこの曲は、力強く取り戻すべき大切なものが何かを訴えかけます。
CD化を願う声が多い曲です。


14. Lift

そしてラストは、アンドレの真骨頂ともいうべきHEAVENESEの全米デビュー版代表曲。


アンコールの拍手の中、HEAVENESE のレーベルプロデューサーであるSheila Eから送られたビデオメッセージが。



アンコール
1.Tell everybody

アンコール一曲目はLIFT同様、世界デビュー版に収録されている代表曲の一つ。

2. シルクロード

一曲で終わると思いきや、再び暗転。
「世界は多くの間違いを犯しながら今までやってきた。よりよい世界にたどり着く道は険しくても、必ずそこへ行けると信じている・・そんな願いを込めた曲」
そう言ってピアノを弾き始めたマレ。
この曲がアンコールで歌われたのは今回が初めてです。
今回も外務省後援をいただき、民間音楽外交使節団を自負するHEAVENESE。
12カ国の大使館から大使や参事官、あるいはそのご家族の方々が来てくださり、終演後のグリーンルームで歓談のひと時を持つこともできました。
HEAVENESEは、生みの親とも言えるプロデューサーアンドレ・クラウチを天に送ったことで、よりいっそう、アンドレのレガシーとしての自覚を新たにしました。

この特別な夜を、皆様と共有できたことに感謝します。
このトリビュートは、来年のチャプター2に続きます!
お楽しみに。


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