2014年10月25日
シャバットあけの午後9時から開演のファイナルステージ。
文字通り、ジャパンウイークそのもののファイナル。
HEAVENESEはオオトリを努めさせて頂きました。

それにしても、シャバットが午後7時に終わり、その後の9時にどれだけの人が観に来てくれるのでしょう?
地元関係者から「今日は本当にHEAVENESEを見ようと思う人がくるでしょう。昨日よりは少なくなると思います」という情報が。
マレ&クミコが会場入りしたのは本番40分前。
ファーストステーションは、昨日のお昼とは打って変わって、閑散としています。

本当に人が来るのだろうか・・・。
そんな不安を胸に抱きながら控え室で最終打ち合わせ。
するとアシスタント夏子からメッセージが。
「イダンがくるそうです。10分くらい前に到着するそうです」

なんと国民的アーティストのイダン・ライヒェルが本当に観に来るという。
マレ&久美子が彼にあったのはたった3週間前の東京。イダンが初来日した際に、イスラエル大使館関係者から紹介で会ったのでした。
「エルサレムに行くんですよ」と言うと、「ぜひ一緒にレコーディングしよう!」と初対面なのに大いに盛り上がり、交友関係がスタート。
ワールドツアーで急がしい彼が、たまたまこの時期だけオフをとっていて国内にいたというのも不思議なご縁です。
でも、まさか本当に来てくれるとは思ってもいませんでした。
彼は首都であるテルアビブに住んでいるのに、一人で車をとばして一時間の道を走ってきてくれたのです。

イダンが来ると分かると、地元関係者は大慌てでした。
オーディエンスから離れたPA席の囲いの中に座ってもらわないと大変なことにおなると急きょ、彼のための場所をつくったり・・。
ロードマネジャー曰く「皆の態度が変わったと」そうです。どうやらイダンとはそういう存在なのですね。
マレもクミ子も「へえ、ほんとーに有名なんだね」と今更ながら驚いた次第でした。
本番の直前の控え室で、イダン到着の知らせが届きました。
遅れることなく時間通りにきたというのも、また一同を驚かせました。
時間に正確なスーパースター。イスラエル人ならではなのでしょうか。

「時間です」というマネジャーの合図と共に、メイン会場離れている控え室から出て、ファーストステーションの露店を横切りステージに向かうと、会場は人であふれかえっていました。
「こんなにいるの?」マレは思わず声に出した程です。
昨日よりも少ないだろうと聞いていたのに、明らかに昨日よりも多いのです。
ステージサイドにまで人が溢れています。
歩いてステージサイドに向かうマレを呼び止め、興奮しながら話しかけてきた女性がいます。
「昨日、あなたたちを初めて観たのよ!あまりにも素晴らしかったから、今日は家族全員をつれてきたわよ!」

この夜HEVENESEを待っていたのは、昨日をはるかに凌ぐ大観衆。
多くの人々が、友達や家族を連れて再び来てくれたのです。
そしてイスラエルのトップスター。
彼の姿に気づいた人々も大勢います。
トップスターが見に来るバンドなのか?!
人々の中にはそんな興奮と期待が溢れていました。

どれだけの人が来てくれるのだろう・・・
そんな心配は完全に吹き飛んだファーストステーションで、おおとり、HEAVENESEのステージが、興奮の中でスタートしたのでした。
セットリストは昨日と同じです。

今日、マレはイスラエル軍への感謝に加え、世界中からのサポートへ感謝を述べました。
エルサレムには世界中から人が集まっているからです。また、イスラエル人でけでなく、パレスチナ人への配慮もありました。
さらに、昨日に続き『エルサレムは平和の都であり、異なる宗教、異なる人種が、和合して暮らしている場所であるから、文字どおり、平和の都として、世界の模範になりえる素晴らしい場所なのだ』と、イスラエル人、アラブ人双方に通じる話し方を念頭に短くメッセージを贈りました。

イダンの曲が始まると、昨日同様、大きな拍手が包みます。
昨日はなかった振り付けが入り、バンド的にも昨日よりもまとまりがありました。2回目の方がいいに決まっています。
イダンも大喜びで自分の曲を演奏するHEAVENESEのビデオを撮っています。
すると、その回りの人々は、HEAVENESEを撮るイダンを撮りはじめました。
オーディエンスにとっても、自国民のヒーローの歌が、その本人の前で演奏されることは、嬉しいことだったにちがい有りません。

リフトが終わると、大きなアンコールの拍手。
奇跡の太鼓の話は今晩も非常に喜ばれました。
アンコールに用意した3N1の演奏を終えると、ものすごい歓声があがりました。
人々は立ち上がり、惜しみなくスタンディングオベーションを送り続けています。
鳴り止まぬ拍手のため、この夜は、もう一度アンコールに答えました。
Tell everybodyです。
この曲が終わったとき、さらに拍手が続きました。
なんという熱狂ぶりでしょう。
人々からあふれ出る惜しみない賛辞の心が温かくて、本当に感動した夜でした。

人々は口々に「来てくれてありがとう」を連呼します。
涙を流し、強く手を握りしめてくれる人もいます。
彼らが心の底からHEAVENESEに感謝していることが、その様子からひしひしと伝わってきます。

終演後の控え室でイダンは言いました。
「イスラエルは世界から非難されていて、カルロスサンタナもイスラエル公演をボイコットした。マドンナとアリシャ・キースだけは『人をボイコットしない』という信念の元、イスラエルに来てくれた。今回のガザとの戦争後、最初にイスラエルに来た海外アーティストがHEAVENESEなんだよ。だから人々は本当に感謝している。君たちは、政治的な目的ではなく、人々のために来てくれたからだ」

you came for the people…彼から語られた言葉。
これはとても重要なメッセージとなりました。
HEAVENESEは今回も、確かに外務省後援をいただき、民間外交使節団の自覚をもってイスラエルに赴きました。
けれども、私たちは政治活動をしているのではなく、エンターテイメントを通して和の心を伝えようとしているだけです。
政治的に非難されている国にも、平和を求める人々がいます。
テロ支援国家だと言われている国にも、涙と笑いを共有できる素朴な人々がいます。
戦争直後のイスラエルにも、敵対している二つの民族に共通する素朴さと優しさが溢れています。

政治ではないから、双方に届くメッセージがあります。
音楽だから政治をこえられるのです。
私たちはイダンの言葉に大いに励まされ、ますますこの道を歩んでいこうと思わされたのでした。

すっかり遅くなったファーストステーション。
大熱狂に迎えられたメンバーたちは、バスに乗ってその場を後にしました。
これが、無名のHEAVENESEには相応しいのです。
私たちが何ものでもないことを忘れないために。

メンバーたちを見送り、マレとクミ子がその場所を後にしたのは、深夜でした。
涼しくなってきた風が、まるで慣れ親しんだ場所から、遠くへ引っ越しをしていくような哀愁を運んできているように感じられました。
たった2日間しかこの場所にいなかったのに。

名残惜しいもの悲しさ。
この場を去りたくないな・・・そんな思いを、遠心力で倒れそうになるほどの勢いでカーブに突進してくる二連のバスが断ち切ってくれました。
イスラエルのバスは、あぶないです!!!


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